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未知と理不尽の交番コメディ漫画!

『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』が面白い

 街があれば必ず交番があり、警察がいます。ところで、彼らは普段何をしているのでしょうか。事件があれば捜査? 通報があれば直行? 暇があればパトロール? スピード違反を取り締まーる? チェケラッチョ、他はなにかしているの? このような認識の方も少なくないでしょう。

 実際は、あれもこれもそんなこともやって息つく間もないのです。「ハコヅメ」を読まなければ警察がこんなに寝てないことを知る機会はなかったでしょう。是非共有したい、「ハコヅメ」の面白さと警察の大変さを。

「ハコヅメ」は唯一受かった公務員だからという舐めてる理由で警察官となった新米女性警官の川合が、超優秀な先輩エリート女性警官の藤とペアを組んで様々な事態に対応しながら成長していくコメディ漫画。

川合← →藤

  痴話喧嘩やUFO目撃などのしょうもない通報に対応したり、仕事中のあるあるだったり、訓練の話だったり、世間からバッシングされたり、子供たちへの講話をしたり、動物を捕まえたり、性被害にあった少女の話だったり、子供の虐待を見抜いて保護したり、過去の事件が蘇ったりと警察の仕事にまつわる様々なストーリーが描かれます。

 ストーリー構成は短編や中編がメインですが、そこでの伏線を回収する長編も挟まれるなど多様です。基本的にはコメディなのですが、ゾッとするような結末の話もあり、凄まじい緩急です。癖になります。

 さて、「ハコヅメ」の魅力を3つに分けて紹介します!

①ブラックすぎる

 ブラックすぎます。圧倒的な縦社会、長すぎる拘束時間、短すぎる睡眠時間にプライベートでの呼び出し…役満ですね。人を人とも思わない殺人的なスケジュールは逆に笑えます。次元の違いっぷりに思わず心を掴まれてしまいました。公務員なのに労働環境が終わっています。

 仕事内容も辛いものです。気力と体力勝負の張り込みや切符を切って市民に嫌われるのは序の口で、暴れる大男にだって割って入って市民の盾にならなければいけないし、遺体との遭遇は不可避で、加害者への取り調べでは口を割らせないと周りが動けないため重圧がのしかかり、性被害にあった少女に、どのようなことをされたのか心の傷を抉りながら聞き取りしなければなりません。マスメディアの批判のおまけもあるよ。十分な睡眠を取れていない中で、丁寧さと正確性と洞察力と配慮を常に求められます。

 ほんとにコメディなんか? と書いていて思ってしまいましたが、ちゃんとコメディです。ブラックすぎるとキャラや読者にツッコませてギャグに昇華しています。安心です。

②連発される下ネタ

 「ハコヅメ」には下ネタが溢れています。一説によれば「ハコヅメ」の構成成分の五割以上を占めているとされます。しかし考えてみれば当然なのです。

 主人公の川合もペアの藤も女性警官であり、女性であるゆえの苦悩を抱えています。腕力の差やトイレ問題などですね。逆に女性であるゆえの利点も描写されます。また、痴情のもつれなどの男女の諍いは日々絶え間なく生産されていますし、性犯罪というカテゴリーもあります。女性警官が主人公の漫画という時点で、性の問題とは切っても切り離せない関係にあるといえるでしょう。下ネタのオンパレードになるのも致し方なし。(性の問題と下ネタはイコールじゃないんじゃ…)

 それと、男性を責め立てるような説教臭い内容でないのも、読者を選ばなくていいと思います。

 下ネタはくだらないが下品ではなくエグいという絶妙なバランス感覚。好き。

③自分だったらと考えさせられるリアリティ

 作品には通底しているリアリティがあります。(唯一、誰とでも仲良くなれる「取り調べの天才」だけはファンタジー入ってる気がしなくもないですが、洗脳なんてものが事実ある以上これすらも現実味があるのかもしれません)

 これは作者泰三子氏が実際に警官として10年以上勤務していたという経歴があるからでしょう。事件や作業などの勤務の描写が具体的で説得力があります。 

 特に白眉なのが感情の描写です。

 加害者にも被害者にも感情があります。それに寄り添う警察にも。直後の被害者の感情や犯人が犯行に至るまでの感情や思考の変化・過程が丁寧に描写されます。かける言葉が見当たらないという状況において、また怒れる人を諭すために、どのような言葉をどんな気持ちで選ぶのかなど、リアリティが凄まじく、現実に間違いなく起きているシチュエーションなだけに、自分だったらどうしたかと考えさせられますね。

 なんせ感情は複雑だからこそ事態は単純じゃないのです。被害者が哀れだとは限りません。加害者も取り調べて見れば気さくな人だったりします。そこも読み応えのあるところだと思います。少し脱線しますが、口を割らせる心理テクニックなども面白い。参考にはあまりならなそうですけどね。

 このような描写は基本はコメディなので下ネタに比べれば少ないのですが、非常に印象に残ります。緊張と緩和みたいな理論でギャグとシリアスがお互いを際立たせている可能性がありますね。純粋に漫画として面白いです。

 最後に、キャラクター同士の掛け合いを魅力としてどこかにぶち込もうとしたのですが、書きどころを失いました。ちなみにこの部分にリアリティはないですね。こんな軽妙なやり取りする奴おらんわ!ガハハ! 

 警察官の仕事はドラマティックなのかもしれません。人生で一度や二度あるかないかの場面に立ち会い続けるのですから。警察志望者が読めばその意気が萎むかもしれませんし、逆に読んで志す人もいるでしょう。筆者は絶対になりたくないと思いました。

 ハコヅメを読めば、そこには非日常が広がっています。しかし、それは紛れもない日常なのです。

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