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静謐なる追憶譚。アフターファンタジー漫画

『葬送のフリーレン』が面白い

「葬送のフリーレン」は、魔王を倒した勇者一行のその後を描いた漫画です。冒険の終わりから始まるという珍しいストーリーで、主人公は魔法使いのエルフ・フリーレンです。

 勇者一行は勇者ヒンメル(ナルシスト/人間)、僧侶ハイター(生臭坊主/人間)、戦士アイゼン(堅物/ドワーフ)、魔法使いフリーレン(鈍感/エルフ)という構成なのですが、エルフは他の多くの作品でもそうであるように、悠久の時を生きる種族です。お決まりというやつでしょうね。そのために、時間感覚が人間とは全く異なり、魔王討伐の10年の旅を「短い」「たった10年」と表現したり、次会う約束も50年後だったりとそんな具合。また、感情も希薄です。

 そんなフリーレンは半世紀ぶりに、彼女にとってはほんの少しの間ぶりに勇者ヒンメルと再会し、そのよぼよぼ具合に愕然とします。

「老いぼれてる…」「言い方ひどくない?」

葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)  山田鐘人 (著), アベツカサ (著)

 そこからなんやかんやあり、旅に出るのが一話ですね。突然雑ですがネタバレは良くないですからね。仕方ないですね。結構いい文章が書けていたのですが、思い直して泣く泣く消しました(辛)。

 かくしてファンタジー世界を旅するフリーレンの冒険が描かれる漫画なのですが、何が良いって読み心地ですね。フリーレンの希薄な感情に呼応するように、キャラクターのやりとりもギャグもバトルも淡々としています。

 だが、それが良い。

 読んでいて燃えたり爆笑したりすることは少ないと思いますが、代わりにとにかく打率が高いんですね。ギャグはくすっとするし、良い話の時はしんみりさせられます。筆者は捻くれてるので、ほら泣けよ。みたいな思惑が透けて見える演出をされると白けてしまうんですよね。「葬送のフリーレン」にはそういった押しつけがましさがないのが素晴らしい。素直にあっさりと読むことができると思います。

 かといって無味無臭ではありません。読めば個性とセンスが確かに静かに爆発しています。キャラクター同士のやり取りが特にいいですね。上記の引用した会話も地味にかなり好きで、淡白さと妙な疾走感がツボです。

 そんな感じで作品の雰囲気自体が良いので、巻を通して面白い。読み終わった後は確かな満足がありますね。

 さらにそこを加速させる要素がもうひとつあります。それは「ノスタルジー」です。

 筆者は「葬送のフリーレン」という作品はノスタルジーに特化させた作品にするという狙いがあるのではと睨んでいます。それほどまでに、作中では頻繁にかつての冒険のエピソードが挿入されます。現在の状況に若かりし頃のヒンメルの言葉が重なるという演出なのですが、感じざるを得ません。ノスタルジー。

 作品を覆う淡々とした静かな雰囲気が、過ぎ去った出来事のあっけなさを際立てています。人の命や願いの脆さや儚さをそういうものであると諦めている、あるいは受け入れているような、まあ実際そうするしかないのですが…。

 時間の経過は虚しくもあり残酷でもあり美しくもある…感傷的になってしまいますね。(しんみり)

 しかし、だからこそ受け継がれていくものの貴さの描写がストーリーに上手く組み込まれていて見事なんですね。(ほっこり)

 ということで読み心地も読後感も抜群なのですが絵も優れています。

 作画がとても美麗でキャラクターは可愛いカッコイイなので眺めてるだけでも面白い。表紙を見てもらうのが手っ取り早いですね。見てよこれ。いいぞーこれ。

 余談ですが7巻の奥の二人のラブコメ要素もあります。二人はフリーレンの旅の同行者で、怒りっぽいけどしっかりものの女の子と臆病だけど優しい男の子の組み合わせ。例に漏れずあっさりしてますがそこが良い。

 最後に、「葬送のフリーレン」を一言で表すなら「ひんやり」でしょうか。「じんわり」でもある。傑作です。おすすめ。

Bitly

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