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時系列シャッフル日常漫画!

『それでも町は廻っている』が面白い

「それでも町は廻っている」は、メイド喫茶でアルバイトをし、推理小説を好む能天気天真爛漫な女子高生嵐山歩鳥あらしやまほとりや彼女の住む町で起こる日常を描いた漫画。

 非常にコミカルな雰囲気とタッチの作品で、「ドラえもん」のような、とても漫画らしい漫画だと感じますね。一方で、飾らず自然な魅力のあるキャラクター達にはジブリ作品に似た清潔感を覚えます。

 登場キャラクターは歩鳥の務めるメイド喫茶の店長のおばあちゃんや友達に先輩、弟妹、ペット、先生、幼馴染、商店街のおっちゃんなど町の住民たちが多数。基本は歩鳥視点の話ですが、群像劇でもあります。

 コメディな日常をベースにしながらも、SF、オカルト、ミステリーなど多彩なジャンルが当然の様に入り混じる割と何でもありな作風です。

 中でもSF回は傑作ぞろいで、優れたSF作品に贈られる賞である「星雲賞」も受賞しています。

 そんな「それ町」最大の特徴は、時系列がシャッフルされている点でしょう。一話完結形式なのですが、読み進めていると違和感を覚えだすはず。「なんかこのキャラ急に仲良くなってるな」「なんか前の話と辻褄が合わなくない?」「髪型が変わっている!あれ?戻ったぞ」など不自然な個所がちらりほらり。

 それもその筈で、「この話では高校3年の夏、次の話では高校1年の冬、さらに次の話では高校2年の秋」といった風に時系列がバラバラになっているのです。

 バラバラになった時系列を組み立ててみると、先ほどの不自然さが解消されるばかりか伏線が張り巡らされていたことに気付きます。「あの回の出来事を踏まえて他の回での発言に繋がっていた」というのは非常にわかりやすい部類で、さりげなさすぎる描写や細かい変化が気付かぬうちに伏線として張られ、いつの間にか回収されているなど完成度の高さに驚愕を禁じ得ないでしょう。

 しかし、時系列についてあからさまな説明はされない場合が多いです。歩鳥の髪型や小物、服装、背景、弟や妹の学年、会話の内容など様々な要素から推理する必要があります。伏線を見つけることで時系列がわかり、時系列が分かることで伏線に気付くという、時系列の組み立てと推理が伏線によってぐるぐる回るという独特な感覚を楽しむことができるのが「それ町」の他にはない魅力だと思います。

 最後に、「それ町」を一言でいうなら「再読性の極み」でしょうか。

 肩の力が抜けるようなコメディでありながら、見かけ以上の凄まじい情報量がある漫画なので読み返すたびに発見があり、味わい深くなっていきます。コスパはおそらく漫画界No.1でしょう。

 時系列がシャッフルされている性質上、最終巻を読み終わった後も1巻から違和感なく読み直すことができます。何度もぐるぐると、終着点のない円を廻るようにね。上手いことを言ってしまいました。失礼しました。

 それでも最終16巻では終わりなき日常の終わりが描かれ寂しい気持ちになりますね。ちなみに同時発売の攻略本ファンブックはキャラクター名鑑や年表が載っておりファン必携の出来です。

 スルメ系なのでガツンとした面白さには欠いているのかもしれませんが、読み継がれていく名作だと思います。おすすめ。

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 余談ですが、「それ町」が好きな人はたぶん「ワールドトリガー」も好きに違いない。逆も然り。

 同作者の「天国大魔境」も解説しています。

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